美術館について
建築について
自宅のような美術館
安東ご夫妻から美術館の構想を伺ったのは開館の4年前、2018年の晩秋のことでした。
いわゆる「美術館」ではなく自宅のような空間に展示したい。そのご夫妻の想いを実現するため、安東邸の要素を取り入れ、来館者をもてなすような建築を目指しました。
安東邸と同様、中庭を中心とした建物は、夫妻が過ごした英国から取り寄せたハンドメイドのレンガで覆われています。また、安東邸の内装を踏襲して展示室の壁の色は部屋ごとに異なったものとし、年代やテーマごとに藤田の作品世界を深く味わえるよう、天井の形状や照明方法も変えています。
設計初期に二度訪れた、藤田が晩年を過ごしたメゾン・アトリエ=フジタ、藤田自ら設計しフレスコ画を描いたフジタ礼拝堂も、空間を醸成する上で参考となりました。
中庭越しに見る空と緑、軽井沢を象徴する風景である浅間山と離山を望むラウンジなど、作品鑑賞をしながら豊かな自然を感じられる工夫も随所にこらしています。
さらに、美術館のロゴマークから派生した幾何学模様をモチーフとして各所に取り入れました。ゆったりと鑑賞を楽しみながら、その幾何学模様を探していただくのも面白いと思います。
安東美術館で藤田の作品を巡るひとときが至福の時間となり、この空間が皆様自身のご自宅でもあるような愛着を感じていただければ、これほど嬉しいことはありません。
d/dt Arch.代表 武富 恭美